コレステロールのお話⑤ ~動脈硬化とは何ですか~
こんにちは目黒駅東口より徒歩3分、白金台駅より徒歩9分 目黒みらい内科クリニック院長のけい先生です。
前回は脂質の運び屋さんであるLDL、HDLのお話をしました。
おさらいをすると
①形のイメージは豆大福
②役割は
・LDL=コレステロールくんを全身の細胞にとどける「宅急便」
・HDL=全身の細胞でいらなくなったコレステロールくんを回収して、肝臓にとどける「回収車」
でしたね。
これに関して前回できなかった余談を2つ。
①HDLのお話
宅急便であるLDLには荷物としてコレステロールくんが積まれているが
回収車であるHDLは、肝臓で作られて血液に出てきた最初は中身がからっぽで、蛋白(アポ蛋白)しかない。
リポ蛋白=脂質と蛋白からできているとお話しましたが、出来たてのHDLは蛋白だけ。
つまり豆大福だとすると、豆と薄皮だけであんこは入っていない状態なんです。
確かに中身がカラで出て行った方がいっぱいコレステロールくんを積めるのでいいですよね。
この状態で細胞からいらなくなったコレステロールくんを集めて、肝臓に届けてくれるわけです。
*HDLは細胞から回収したコレステロールくんをLDLに渡したりもするのですが、ややこしくなるので省きます。
*LDLには中性脂肪も含まれていますし、VLDLやIDL、カイロミクロンというリポ蛋白もあるのですが、さらにややこしくなるので今回はこれも省略しますね。
②LDL、HDLの大きさは変化する
前回のブログで豆大福とともにリポ蛋白の図を出しましたが、今回はこの
リポ蛋白の硬さと大きさ
をイメージしてみましょう。
豆大福でのお話がまだ続きます。
豆大福はもちもちで押したらへこむし、柔らかいですよね。
実はリポ蛋白も同じように柔らかく、形が柔軟に変化します。
たとえで「宅急便」や「回収車」のお話を出しましたが、かっちりとした車の様でもなく、ガチャガチャのカプセルのように固いものでもありません。
身体の中で形が変わらないくらい固いのは骨と歯、あとは爪くらい。
それ以外は柔らかい細胞が集まってできているので、基本は柔らかいのです。
そして形だけでなく、大きさもある程度の幅で変化します。
どうして大きさが変化するのか?というと、中身のコレステロールくん(や中性脂肪)の出し入れによって変わるのですね。
リポ蛋白の中身のコレステロールくんを細胞に渡せば、渡した分小さくなるし、
リポ蛋白が細胞からいらなくなったコレステロールくんを回収すれば、その分大きくなる。
豆大福のあんこが好きな人が、薄皮をめくって少しあんこだけ食べて、薄皮をもとに戻せば大きさが小さくなるし
豆と薄皮だけの状態の豆大福(この状態で豆大福と呼べるのか?)にあんこを入れれば大きくなるのと同じです。
ただ私たちが「LDL」「HDL」と呼んでいるリポ蛋白、それぞれ大きくなったり小さくなったりできる範囲は決まっていると言われています。
LDL:16.7~28.6nm程度
HDL:7.6~15nm程度
1nm=1mmの1000分の1ですので相当小さいですね。
もちろん数字は覚えなくて大丈夫です。ただ
「LDLの方がHDLよりも少し大きいんだな・・・」
と何となく覚えてもらえれば十分ですよ。
ふとLDLのLはLargeのLとして覚えてもらえればいいかとも思ったのですが、本来はLow Density LipoproteinのLowなのでこんがらがってしまいそうだということに気づきやめました。
いずれにせよ100分の1mm程度の違いで大きさがコントロールされていることを考えると、実に絶妙なバランスの上にコレステロールくんの受け渡しがなりたっているんだな、と感心するばかりです。
ここまでが余談で、これからが本題です。
余談が長くてすいません・・・。
③動脈硬化とは何ですか?
このコレステロールくんですが肝臓で作られて、運び屋さんのLDLに乗っかって全身の細胞に運んでもらいます。
脳や心臓、肺、肝臓、腎臓などの内臓や筋肉、皮膚、血管などですね。
LDLは蛋白(アポ蛋白)を目印として出しているのですが、それを見つけた細胞にくっつくと、そのまま細胞の中に取り込まれてしまいます。
取り込まれたLDLは細胞の中でいろいろな処理を受けて、結果的にコレステロールくんやリン脂質などを細胞に渡して使ってもらうわけです。
ここで血管、しかも動脈に注目してみましょう。
まず血管のお話から。
血管は文字通り
血が通る管=パイプ
ですが
3層構造
になっているんですね。
(看護roo! ナースみんなのコミュニティ ホームページより抜粋)
内側から
・内膜(内皮細胞)
・中膜
・外膜
となっているのですが、動脈の方が静脈より中膜、外膜が厚いのです。
動脈は心臓から出た血液をしっかり受け止めるため、壁が厚くなっているのですね。
動脈と似たような作りのものが何かないかな、と探していたらありました。
「高圧ホース」
が似たような構造なんです。
(JLIA基準(高圧ホース/種類・選定・構造)より抜粋)
・動脈の内膜=高圧ホースの樹脂ライニング層
・動脈の中膜=内層
・動脈の外膜=補強層および外層
となります。
いつもの通り細かい名前は覚えなくていいのですが、作りが何となく似てませんか?
高圧ホースは中に水などの液体を通した時に、内側から高い圧力がかかっても大丈夫な構造になっています。
これを作る時に血管の構造を参考にしたかどうかは知りませんが、作りが似ているのが面白いですね。
人間の構造や仕組みと同じようなものはないかな、と探しているといろいろあるのです。
この動脈ですが、内膜と中膜の間にコレステロールがたまると動脈硬化と呼ばれる変化が起きます。
動脈硬化=動脈が硬く変化すること
なんですね。
この動脈硬化、進んだ方の動脈を触るとかなりカチコチになっています。
本来ゴムのように弾力のある血管がカチコチに変わる。人間の身体は本当に不思議ですね。
ではなぜ動脈硬化が起きるのでしょうか?
鍵は
「大きさの小さなLDL」
です
先ほど余談でLDLの大きさはある程度の範囲で変化すると書きましたが、LDLの中でもサイズの小さなものがあります。
これを
small,dense LDL
といいますが、名前は覚えなくて大丈夫です。
「大きさの小さいLDL」
というとらえ方で十分ですよ。
大きさが小さいと、狭いところでもすり抜けていくイメージがありませんか?
サッカーで言えばアルゼンチンのスーパースター、ディエゴ・マラドーナをご存知でしょうか?
ディエゴ・マラドーナについてはこちら(Wikipedia)
1986年FIFAメキシコワールドカップ 準々決勝イングランド戦で5人抜きをしてゴールを決めたシーンが印象に残っているのですが、決して身長が大きくないマラドーナが自分より大きなイングランド選手を次々とかわしてゴールした姿は忘れられません。
その当時を知らない方はこちらからどうぞ
今見ても華麗で素晴らしい、の一言ですね。
けい先生の年がばれる・・・
マラドーナの様に華麗に・・・ではないのですが、この「大きさの小さいLDL(small,dense LDL)」も小さいので内膜(内皮細胞)をすり抜けて血管の壁に入れるのです。
そしてそこで
「酸化」
という変化を受けます。
この「酸化」については前回のブログでお話していますので興味のある方はこちらからどうぞ
この酸化を受けた「大きさの小さいLDL(small,dense LDL)」を、「単球」というものから変化したマクロファージという身体のお掃除屋さんが食べた結果、動脈硬化(アテローム)に進んでいくのですね。
詳しくは下の図をご覧ください。
(Liposearch社 ホームページより抜粋)
いかがでしたか?
まとめると動脈硬化には、
大きさの小さなLDL(small,dense LDL)、酸化、マクロファージ
が関わっているんだな、と思って貰えるとありがたいです。
今日も難しかったと思いますが、最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました。
けい先生
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