新型コロナのPCR検査、抗原検査、抗体検査は何が違うのですか? ~かなりざっくりとお話します~
こんにちは。目黒駅東口より徒歩3分、白金台駅より徒歩9分 目黒みらい内科クリニック院長のけい先生です。
先日当院のスタッフと話をしていた時に
「新型コロナのPCR検査、抗原検査、抗体検査は何が違うんですか?」
と質問がありました。
すでにPCR検査、抗原検査、抗体検査についてはいろいろなよい記事が出ているものの、出てくる言葉は難しいものもあり、とっつきにくく感じる方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、けい先生なりに
・分かりやすさ重視で
・思い切ってざっくりと
お話しすることで、少しでも皆様が理解しやすくなればと思っています。
内容は
①まずは検査の名前を見直してみましょう
②何を検査で確認しているのですか?
③遺伝子、PCR検査、抗原、抗体とは何ですか?
1)遺伝子とは何ですか?PCR検査とは何ですか?
2)抗原とは何ですか?
3)抗体とは何ですか?
この順にお話して行きますね。
①まずは検査の名前を見直してみましょう
PCR検査、抗原検査に抗体検査・・・この3つの検査、並べて書くとみんな似たような検査じゃない?と思うのではないでしょうか。
普段の生活では全く使わない言葉ですし、なじみがないのは当然です。
そこでまず検査の名前をもう少し詳しくかみ砕いてみましょうか。
・PCR検査・・・新型コロナウイルスの遺伝子があるかどうか、PCRという方法で遺伝子を増やして確認する検査のこと
・抗原検査・・・新型コロナウイルスの抗原(タンパク質)があるかどうか、確認する検査のこと
・抗体検査・・・新型コロナウイルスに対する抗体(タンパク質)を私たちが持っているかどうか、確認する検査のこと
となります。
これでも「?」がいっぱいだと思いますが、これから徐々に上の文章をかみ砕いていきますので、まずは
「ふ~ん、よく分からないけどそうなんだ」
くらいの感覚で大丈夫です。
②何を検査で確認しているのですか?
検査の違いを理解するために、それぞれ「何を」確認しているのか見てみましょう
・PCR検査・・・新型コロナウイルスの遺伝子
・抗原検査・・・新型コロナウイルスの抗原
・抗体検査・・・私たちの体にある、新型コロナウイルスに対する抗体
となるのですね。
そうするとお気づきの方もいるかと思いますが、3つの検査はざっくり2つに分けられますね。
・PCR検査と抗原検査・・・新型コロナウイルスそのものに関する検査
・抗体検査・・・私たちの体についての検査
となります。
まずここが大事ですので押さえておいてください。
最後に試験などはありませんのでご安心を。
ここでPCR検査の名前について、
「新型コロナウイルスの遺伝子を見ているんだったら、「遺伝子検査」でいいんじゃないの?」
と思った方もいるかもしれません。
けい先生は「遺伝子検査」とした方が何を見ているか分かりやすいのでいいなと思うのですが、いろいろな理由で「PCR検査」となったものと思います(正確には「real time RT-PCR検査」と書くべきなのですが覚えやすさ、伝わりやすさ重視で「PCR検査」になったものと思います。この違いも専門的すぎるので省略させて頂きます)。
ここまではいいでしょうか?
では次に行きましょう。
③遺伝子、PCR検査、抗原、抗体とは何ですか?
ここでごちゃごちゃになる方が多いと思います。
頑張ってお話しますね。
1)遺伝子とは何ですか?PCR検査とは何ですか?
まず「遺伝」という言葉です。
突然ですが皆様のからだ、どこかしらご両親と似た部分があるのではないでしょうか。
例えば
「眼の大きいのは母親似だ」
「歯並びが悪いのは父親似だ(最近息子に言われました・・・)」
「身長が高いのは・・・」
など好きなところからそうでないものまで色々あると思います。
この様に、好き嫌いにかかわらず親から子にからだの特徴が受けつがれることを
遺伝=(特徴を)遺(のこ)し、伝えること
というのですね。
ではどのようにして親のからだの特徴が子に伝わるんだろう?と研究が進んだ結果、親から子に
遺伝子
というものを介して伝わっていることが分かりました。
何で「遺伝子」という名前になったのか、由来を調べたのですがうまく見つけられませんでした。
知っている方、分かった方は教えてください・・・。
ちなみに遺伝子の形はざっくりとこんな感じです。
こんなにカラフルではないですが、学校の教科書などで見た記憶がないでしょうか?
「2重らせん構造」など聞いた覚えがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
人間の身体には細胞が約60兆個もあるのではないかと言われていますが、その細胞1個1個にこの遺伝子があると言われています。
細胞は眼で確認できないくらい小さなものなので、当然遺伝子もそのままでは見えません。
ちなみに遺伝子の形は
・2本の鎖がくっついて(チャックみたいな感じです)
・ねじれてらせんを作っている状態
と考えて下さい。
身近なもので言えば、パスタの「フジッリ」みたいなものでしょうか。
日本では「カールマカロニ」とも言います。
ソースがよく絡んで美味しいのは知ってましたが、名前は・・・知りませんでした。皆様、知ってました?
「パスタ ねじねじ 名前」で検索して結果が出てくるなんて、便利でありがたい世の中ですね。
(出典:Wikipedia フジッリ)
イメージしていただくのはこの辺にして、この遺伝子は
からだをつくる設計図
と言われているくらい大事なものです。
つまり遺伝子がなければからだを作ることができませんし、人間から生まれた子が人間となるのもこの遺伝子のおかげなんですね(遺伝子はフジッリとは違い、私たちの目に見えない極めて小さいサイズなのですが、そこに人間をつくる情報が入っているなんてすごいことだと思いませんか?)。
そして遺伝子は人間には人間の、動物には動物の遺伝子があり、さらに植物、魚、昆虫から菌と言った生物やウイルスにまで存在しているのですね。
ここでようやくウイルスが出てきました。
つまり今回のお話の新型コロナウイルスにも新型コロナウイルスの遺伝子があるわけで、この遺伝子は
新型コロナウイルスを作る設計図
とも言いかえることができるわけです。
ただこの遺伝子は極めて小さく、かつ量も少ないのでそのままでは確認することが難しいのですが、ありがたいことに遺伝子を確認するための方法も研究が重ねられ、遺伝子の量を増やして確認することができるようになったのですね。
この遺伝子の量を増やす検査のことを
PCR(polymerase chain reaction)法
といいます。
ようやくPCRという言葉にたどりつきました。
1986年に発明されたのですが、発明した人は1993年にノーベル賞をもらったくらい画期的な方法なんですよ。
PCR法を使うと(原理的には)遺伝子の量を
2倍→4倍→8倍→16倍→32倍→64倍→・・・・
とドンドン増やしていくことができるのです。
図で表すとこんな感じ。
(出典:大阪大学微生物研究所 微生物研究所からのコロナウイルス情報:ウイルス検出法)
遺伝子を増やしてくことを「複製」と書いていますが、「コピー」と思ってください。
上の図で「複製30回」とありますが、30回「コピー」するといくつになるか知ってますか?
なんと
1,073,741,824=約10億
なんですね!すごい数です。
この数字を見ただけで、ノーベル賞をもらえた理由の一端が分かる気がしませんか?
(ちなみにけい先生も大学で研究をしていた時、PCR法を用いた検査にはすごくお世話になっていました)
ここまで読んで、
「じゃあ遺伝子が1つでもあれば、PCR法を使った検査でウイルスがいるかどうかわかるんじゃないの?」
と思った方。
確かにそうなんですが、実際はある程度ウイルスの量がないとPCR検査をしてもうまく新型コロナウイルスの遺伝子が増えないことが分かっているのですね。
理屈ではうまくいくはずのことでも、実際やってみるとうまくいかないことは普段の生活でも時々経験しますが検査も同じ。
つまり
検査にも限界があるんだ・・・
という事を知っていただけるとありがたいです。
まとめますと
PCR検査・・・新型コロナウイルスを作る設計図である遺伝子があるかどうか、PCR法という検査で遺伝子を増やして確認すること
となるのですね。
ここまではよいでしょうか?
2)抗原とは何ですか?
突然ですが自宅でくつろいでいる時にインターホンがなったとしましょう。
誰か遊びに来る予定があったり、アマゾンで注文した品物が届く予定がある場合はいいのですが、そうでなければびっくりしますし「何だろう?」「誰かな?」と思いますよね。
モニター付きのインターホンがあれば誰が来たのかを画面で確認したり、ドアについている穴(「のぞき穴」と言うのかと思ったら、ドアアイ、もしくはドアスコープというらしいです。知らなかった・・・)から相手を確認し、その上でドアを開けるのか開けないのかを決めるのではないでしょうか。
つまり相手のことは
・顔
・服装
・背格好
などで判断するわけですね。
私たちの身体を考えてみると残念ながらドアはなく、口や鼻からは食べ物や空気などの他にいろいろな菌やウイルスが入ってくることがあります。
ただこの菌やウイルスが入ってきたとしても、身体が
変なものが入ってきたな・・・
と判断した場合、攻撃をしてやっつけてくれているのですね。
では身体は何を見て・・・いや、見ているわけではないので、何を目印にして相手を判断しているのでしょうか?
実は
菌やウイルスにあるタンパク質
で判断していると言われています。
ここで新型コロナウイルスの身体(?)を見てみましょう。
出展:AFPBB NEWS
なんだか難しいことがいっぱい書いてありますが、細かいことはあまり気にしないでくださいね。
大切なのは、
新型コロナウイルスのからだには、いくつかタンパク質があるんだな
ということなんです。
上の図では4種類のタンパク質が書かれています。
新型コロナウイルスのタンパク質、どんな役目があるのかというと
・私たちの細胞に入り込み
・入り込んだ細胞の中で増え
・細胞から出る役目やウイルスの形を保つための役割を果たす
ようです。
新型コロナウイルスが私たちの身体に入ってきたとき、この新型コロナウイルスのタンパク質を目印として身体が攻撃をするのですが、この
新型コロナウイルスのタンパク質=抗原
というのです。
つまり抗原検査は
新型コロナウイルスのタンパク質(=抗原)があるかどうかを確認する検査
なんですね。
新型コロナウイルスタンパク質存在確認検査
と言ってもいいのですが、長くて覚えにくい・・・。
そのため
抗原検査
と言ってしまった方が短いし覚えやすくていいわけです。
実はこの新型コロナウイルスのタンパク質、私たち人間は持っていないタンパク質なのです。
そのため
抗原検査で新型コロナウイルスのタンパク質(=抗原)を確認できた=抗原検査陽性
となれば
新型コロナウイルスがいる
という証明になるのですね。
ただPCR法の検査と同じく、ある程度新型コロナウイルスがいないと検査をしても陽性に出ないことがあるので注意が必要なんですね。
ここからは少し細かい話になるので、興味のある方だけお読み下さいね。
上の図をみると、新型コロナウイルスのタンパク質は
・スパイク(S:Spike)タンパク質
・エンベロープ(E:Envelope)タンパク質
・ヌクレオカプシド(N:Nucleocapsid)タンパク質
・膜(Membrane)タンパク質
の4つあるとされています。
このうち、抗原検査で確認しているタンパク質は
・ヌクレオカプシド(N:Nucleocapsid)タンパク質
なのではないかと思われます。
(出展:先端医科学研究センター 新型コロナウイルス抗原を特異的に検出できる モノクローナル抗体の作製に成功〜国産初の抗原簡易検査キット開発を目指す)
抗原検査のキットとして富士レビオ社のエスプライン®SARS-COV2 があるのですが、その添付文書にも確認しているタンパク質の記載がないのであくまでも推測となります。
ご参考になれば幸いです。
3)抗体とは何ですか?
私たちの体に新型コロナウイルスが入ってきたとしましょう。
そうすると私たちの体が新型コロナウイルスのタンパク質を目印にして
変なものが入ってきたな・・・
と判断します。
変なものはやっつけないといけないので攻撃態勢を整えるのですが、このために身体で作られるものを
抗体
というのです。
抗体は人間の体がつくるタンパク質で、形はYの字をしています。
名前は「免疫グロブリン」というのですが、例によって覚えなくても大丈夫です。
先ほどの抗原もタンパク質でしたが、抗体もタンパク質なんですね。
違いは
抗原・・・新型コロナウイルスにあるタンパク質
抗体・・・人間の体がつくるタンパク質
ということなんです。
しかもこの抗体、新型コロナウイルスが体に入ってきた場合に初めて体で作られるタンパク質なんです。
つまり新型コロナウイルスが身体に入ってきたことのない人には、この抗体はないことになります。
よって基本的には
抗体検査が陽性=新型コロナウイルスが身体に入ってきたことがある証拠
となるわけです。
ただ新型コロナウイルスが身体に入ってきたとしても抗体が作られるのにある程度日数が必要なのと、新型コロナウイルスにかかった人でも時間がたつとこの抗体がなくなってしまう場合があると言われているので、「陰性」の場合でも解釈に注意が必要なんですね。
この抗体ですが、新型コロナウイルスの抗原(=新型コロナウイルスにあるタンパク質)とくっつくことで、体がウイルスをやっつけやすくしてくれています。
この抗体のすごいのは抗原にぴったりあった抗体を、抗原の数だけ自在につくれることなんです。
ほんと私たちのからだはすごいですね。
例えば
・新型コロナウイルスには新型コロナウイルスの抗体
・インフルエンザウイルスにはインフルエンザウイルスの抗体
など、それこそ数限りなく作ってくれるのです。とても柔軟性、応用性があるのが分かりますね。
いかがでしたでしょうか。
以上PCR検査、抗原検査、抗体検査についてかなりざっくりとお話をしてみました。
細かい部分ではツッコミどころがあると思いますが、分かりやすさ重視で書いたためご容赦頂けますと幸いです。
長くなりましたが今日はこの辺で。
本日も最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
けい先生
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