コレステロールのお話③ ~「運び屋さん」のお話①~
こんにちは。目黒駅東口より徒歩3分、白金台駅より徒歩9分 目黒みらい内科クリニック院長のけい先生です。
前回は脂質、脂肪、あぶらの違いについてお話ししました。
簡単にまとめると
・あぶらには「油」と「脂」があり、あわせて「油脂(ゆし)」ということ
・脂肪=中性脂肪であり、油脂とほぼ同じであること
・脂質は中性脂肪(油脂)、コレステロール、リン脂質や脂溶性ビタミンなどを広く含む言葉であること
そして
・脂質、脂肪、あぶら(ゆし)の意味は厳密に分かれておらず、あいまい
だということをわかって頂ければと思います。
それを踏まえて
「コレステロールくんは身体のなかでどのように運ばれているのか」
を2回に分けてお話ししますね。今回が1回目です。
ただこのお話はコレステロールだけではなく脂質のお話となりますので、今日は脂質を
「脂質さん」
と呼んでお話を進めていきます。
この水に溶けない脂質さんはどのように血液の中を運ばれているのでしょうか?
糖分もそうでしたが、身体はうまくその仕組みを整えてくれているのです。
脂質さんはうまく「運び屋さん」に運んでもらっているのですね。
この運び屋さんは水となじみ、仲が良い。
脂質さんが水に溶けないなら、うまく水になじむ「運び屋さん」を使って運んでしまおう、という発想です。
ちょっとここであぶらと水の関係をイメージしてもらいましょう。
お皿についたあぶら汚れは水やお湯で落ちないですが、洗剤を使うと簡単にきれいになりますよね。
テレビコマーシャルでもおなじみかと思います。
洗剤は「界面(かいめん)活性剤」と呼ばれるものですが、あぶらとも水とも仲良くできるのですね。
界面活性剤はこんな感じです。
(イドカバネット ホームページより抜粋)
水になじむ部分、あぶらになじむ部分両方を持っています。
洗剤はあぶらになじむ部分をうまくつかって、あぶらの周りをぐるっと囲みボールみたいな形にして中に閉じ込めてしまいます。
その結果ボールの表面には水になじむ部分が出ているんですね。
するとお水で流すとこのボールが水となじむので、するっと流れていくわけです。
このボールを「ミセル」というのですが、高校の科学で習うこの言葉を覚えてる方もいるかもしれません。
こちらのサイト(ひらめき工作室)が分かりやすく説明してくれていますので、興味のある方はどうぞご覧下さい。
ただ洗剤を血液に入れてはいけませんので、人間には独自の運び方があるのです。
ここまではよろしいでしょうか?
ここからは「運び屋さん」の説明になりますが、いつものようにイメージから行きましょう。
今回のポイントは
豆大福
です。
あんこがギッシリ詰まった豆大福、おいしいですよね。
白い薄皮、表面にポコポコ出ているえんどう豆・・・大福とは違う味わいです。
一緒にお茶があったら最高ですね(ブラックコーヒーと頂くのもおすすめです)。
・この豆大福がコロコロとたくさん血液のなかをめぐっている
・もしくは流れるプールのなかに豆大福がたくさん流れている
(もちろんですが決してやってはいけないですよ)
ところを想像してみて下さい。
・・・イメージがわいたでしょうか?
食べたくなる気持ちは置いておき、気を取り直していきましょう。
豆大福をざっくり分けると
・えんどう豆
・薄皮
・あんこ
と3つに分かれます。
実は脂質さんの「運び屋さん」も豆大福のような形をしているのです。
(Lipo SEARCH社 ホームページより抜粋)
この運び屋さん、ちゃんと名前がついていまして
「リポ蛋白」
といいます。
「リポ=lipo=脂質」
という意味があるので、
「リポ蛋白=脂質と蛋白が一緒になったもの」
と覚えていてください。
・・・・・
また余談ですが、「リポ~」とつく言葉で代表的なものは
「リポビタンD」
ですかね。
これは
脂肪分解=Lipolysisの「リポ」と
ビタミンを縮めた「ビタン」
をくっつけたもの、と言われているようです。
「タウリン1000㎎配合」
とコマーシャルで必ず言っているタウリンが、脂質さんのうちコレステロールくんや中性脂肪に対してよい働きをするので「リポ~」とつけたのではないでしょうか?
・・・・・
すいません、元に戻ります。
もう一度改めて豆大福とリポ蛋白を見てみましょう。
豆大福をリポ蛋白と置き換えてみると、
・えんどう豆 = アポ蛋白
・薄皮 = リン脂質、コレステロール(遊離コレステロール)
・あんこ = コレステロール(コレステロールエステル)、トリグリセライド=中性脂肪など
といった組み合わせになります。
単語が難しくなってきたのですが、覚えなくても大丈夫ですよ。
ここで、
「ちょっと待った、脂質さんにはコレステロール、リン脂質もあって、水に溶けないと言ってたじゃないか。それが薄皮部分にあるのはおかしいんじゃない?」
と思った方・・・その通りなんです。
確かにリン脂質とコレステロールも脂質さんなのですが、実はこれが先ほどの洗剤と似た作りをしています。
脂質さんではあるものの、水となじみやすい部分ももっているのです。
リン脂質の構造を見てみましょう。
(関西学院大学 理工学部 物理学科 加藤研究室ホームページより抜粋)
親水性頭部=水になじむ部分
疎水性尾部=あぶらになじむ部分
と置き換えてくださいね。
人間の身体だとすると
「頭」=水になじむ部分
「身体」=あぶらになじむ部分
でしょうか。
そうすると先ほどの界面活性剤の構造と似ているのが分かると思います。
(ちなみにコレステロールには「遊離」コレステロールとコレステロール「エステル」というものがあり、
遊離コレステロールが水になじみやすい部分を持っています。)
水になじみやすい部分を薄皮の外に突き出し、薄皮の内側にあぶらとなじみやすい部分を向ける。
身体でいえば頭を外に、身体を内側に向けるわけです。
そうすることで脂質さんを中に閉じ込めているのですね。
もう一度こちらを見てください。
そしてえんどう豆に当たるタンパク質(アポ蛋白)ですが、このタンパク質にもいくつか種類があります。
またタンパク質(アポ蛋白)は大事な目印としての役割もあるのです。
・・・・・・
ここまで長くなりましたので、この続きは次回お話しますね。
本日も最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました。
けい先生
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