麻しん、風しん、水ぼうそう、おたふくかぜ・・備えはできてますか?その①
こんにちは。目黒駅東口より徒歩3分、白金台駅より徒歩9分 目黒みらい内科クリニック 院長のけい先生です。
2019年12月に中国の武漢で発生したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症、以下新型コロナウイルス感染症で記載しますね)、このブログの執筆日(2020年2月18日)時点ではまだ広がりを見せています。
連日の報道により、日本のみならず世界各国で新型コロナウイルス感染症の拡散を防ぐよう様々な対策がなされていますが、感染経路が明らかでない国内感染例も報告されはじめています。
新型コロナウイルス感染症に対し現時点では有効な治療法は確立されておらず、また予防のためのワクチンもない状態ですので、1日も早く終息することを願うばかりです。
今回の新型コロナウイルス感染症の報道を見ていて思うのは、グローバル化が進み世界を行き交う人の数が格段に増えてきたため、今まで以上に
他の国で発生している感染症の影響を、日本人も受けやすくなっている
ということです。
特に今年は東京オリンピックの年。4年に1度の祭典を楽しみに世界中から多くの方々が日本にやってこられます。
2019年9月のラグビーワールドカップの際、日本を除く出場国(17カ国)からの訪日客数が
34万7200人
だったようです(観光経済新聞より抜粋)。
これは東京都新宿区の人口(34万8452人)とほぼ同じ数みたいです(住民基本台帳による世帯と人口 令和2年1月参照)。
すごい数ですね・・・。
東京オリンピックには206の国・地域が参加を予定しているため、ラグビーワールドカップをはるかに上回る方々が世界中からやってこられるでしょう(大勢の方が集まることを、マス(大勢=mass)・ギャザリング(集まる=gathering)といいます)。
そうすると
海外で流行している感染症が日本に入ってくる可能性
がありますし、また反対に
日本で流行してる感染症を海外に広めてしまう可能性
もあるのではないか、と考えるのが大切になります。
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ちなみに「感染症」と書いていますが、感染症とは
細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など(こういったものをまとめて病原体といいます)が体の中に入って増え、その結果症状が出る病気
のことをいいます。
先ほどお話した新型コロナ「ウイルス」感染症は、その名の通り
ウイルス
が身体の中に入って増え、その結果症状が出る感染症なのですね。
ちなみに冬場に流行るインフルエンザ、下痢や嘔吐を起こすノロ、ロタ。
流行り目を起こすアデノなどもウイルスなんですよ。
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感染症を起こす細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの病原体はたくさんあるのですが、今回のオリンピックで特に注意が必要な感染症は
はしか(麻しん)、三日はしか(風しん)、水ぼうそう(水痘)、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
であると言われています(医療従事者、大会関係者の方に対しては他にも髄膜炎菌感染症、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザなども挙げられていますが、今回は省略させていただきます)。
この4つの感染症はいずれも
ウイルス
による感染症なのですが、それ以外にも共通点があるのですね。
①ほかの人にうつる力(=感染力)が強い
②原因のウイルスを叩く治療法はないが、ワクチン(予防注射)を打つことでほぼ予防できる
といったことが特徴なんです。
これから1つずつ見ていきましょう。
①ほかの人にうつる力(=感染力)が強い
今回の新型コロナウイルス感染症の話題の中で
基本再生産数
という言葉を耳にされた方もいらっしゃると思います。
この言葉、漢字から見ても意味を推測できないですよね。
これは簡単に言うと
1人の人から何人にその病気がうつるか
=感染力がどれくらい強いのか=感染力の目安
なのですね。
つまり
基本再生産数が少ない→感染力が弱い
基本再生産数が多い→感染力が強い
というわけです。
「基本再生産数」ではわかりにくいので、このブログでは「感染力」という言葉でお話していきますね。
この「感染力」はどれくらいの数字だと多くて、どれくらいの数字だと少ないのか分かりませんよね。
そこで他のウイルスの感染力を見てみることにしましょう。
まずはこちらの図をご覧ください。
(新型コロナウイルス感染症の「感染力」はどれくらい強いのか?忽那賢志|感染症専門医 1/26(日) 13:54より抜粋)
まず左上に
インフルエンザ:1.4~4人
とあります。
冬場に流行するインフルエンザの数、これを目安として下さい。
そのうえで他の感染症を見てみると
新型コロナウイルス感染症:1.5~2.4人(*今後変わる可能性あり)
エボラ出血熱:1.5~2.5人(エボラウイルスというウイルスが原因で起こる病気です。詳しくはこちらを参照して下さい)
SARS:2~5人
三日はしか(風しん):6~7人
はしか(麻しん):12~18人
となっています。
インフルエンザと比べると三日はしか(風しん)、はしか(麻しん)の感染力の強さが分かりますね。
ちなみに図にはないですが
水ぼうそう(水痘):8~10人(出典:国立感染症研究所 水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化 ~感染症発生動向調査より・第2報~)
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎):4~7人もしくは11~15人(出典:国立感染症研究所 2010~2011年の流行性耳下腺炎の流行前後における抗体保有状況の変化)
と言われています。
いずれもインフルエンザより強い感染力を持っているのがお分かりいただけますでしょうか。
②直接原因のウイルスを叩く治療法はないが、ワクチン(予防注射)を打つことでほぼ予防できる
これだけ医学が進歩しても、上記4つのウイルスを叩く治療法は残念ながらありません(水ぼうそう(水痘)のウイルスに対しては、ウイルスが増えるのを抑える薬があります)。
そのため感染し症状が出た場合、出た症状を和らげる治療法(症状に対する治療=対症療法)しかないのが現状です。
しかし幸いなことに上記4つのウイルスによる感染症は
ワクチン(予防注射)を打つことでほぼ予防できる
ことが分かっています(残念ながら100%ではありません)。
ワクチン(予防注射)を打つことで、体にそのウイルスに対する抵抗力をつけることができるのですね。
ただ残念なことに1本打ったらどんなウイルスにも抵抗力を持つことができるようなスーパーワクチンはないのです。
そのためそれぞれのウイルスに対するワクチンを打っていく必要があるのですね(ただし風しんと麻しんに対するワクチンを一緒にした混合ワクチン(MRワクチン)や、4種類の混合ワクチンなどは存在しています)。
そうなると、皆様は子供のころから多種類のワクチンを何回も受けてきた歴史がありますので
「大丈夫じゃないの?」
と思った方もいると思います。
ところが大丈夫ではない場合もあるのですね。
これには
1)ワクチンには定期接種のものと任意接種のものがある
2)年代でワクチンの接種状況が違う
3)徐々に抵抗力やワクチンの効果が弱まる
ことも考える必要があるからなのです。
それでは順に見ていきましょう。
1)ワクチンには定期接種のものと任意接種のものがある
ワクチンを打つ予防接種には
・法律に基づいて市区町村が主体となって実施する「定期接種」
・希望者が各自で受ける「任意接種」
があります。
もう少し分かりやすく書きますと
定期接種・・・ワクチン代は自治体が費用を負担してくれるので、基本お金はかからない(一部自己負担が必要なワクチンあり)
→お金を負担するので、しっかり決まった期間に決まったワクチンを打ってください、というもの
任意接種・・・そのワクチンを受けたい人が自分で費用を支払う
→受けたい人が受けて下さい。受けるかどうかは本人の意思にお任せ(=任意)しますし、費用も自分で払ってくださいね、というもの
なんですね。
よって皆様は定期接種のワクチンはほぼ受けているものの、任意接種のワクチンは受けていない人がいる、と考えるのが自然です。
ちなみに今回のはしか(麻しん)、三日はしか(風しん)、水ぼうそう(水痘)、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)を見てみると
定期接種・・・はしか(麻しん)、三日はしか(風しん)、水ぼうそう(水痘)
任意接種・・・おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
なんです。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)のワクチンは定期接種ではないのですね。ちなみに先進国でおたふくかぜワクチンが定期接種になっていないのは
日本のみ
となっています(「医療関係者のためのワクチンガイドライン第3版より抜粋」)。
また定期接種対象のワクチンであっても、いろいろなワクチンを打たなくてはいけないのでうっかり打ち忘れてしまっていた・・・などという場合もあるかもしれません。
「そういえば今までどんなワクチンを打ったことがあるんだろう?」
と気になった方。
いままでのワクチン接種の記録を確認できるのは
母子手帳
ですので、これを機会に確認していただくのも大事ですね。
2)年代でワクチンの接種状況が違う
実は1)に書いた定期接種となっている3つのワクチンのうち
・三日はしか(風しん)
・水ぼうそう(水痘)
には注意が必要なんです。
【三日はしか(風しん)】
ある年代(昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれ)の男性は三日はしか(風しん)に対する抵抗力が低いことがわかっています。
そのため平成31年4月から厚生労働省が主導となり、原則無料で風しんに対する抵抗力の検査(抗体価)を行い、抵抗力の低い人には
無料
でワクチンが受けられる体制が整えられています(この体制のことを風しん抗体検査・風しん第5期予防接種と言います)。
しかもこのワクチンですが、三日はしか(風しん)だけではなく
麻しん・風しんの混合ワクチンであるMRワクチン(麻しんは英語でMeasles、風しんは英語でRubellaなので、それぞれの頭文字を取ってMRワクチンとしています)
を受けることができるのですね。
つまり検査の結果ワクチンを打ったほうがよい、との結果が出た場合は
無料ではしか(麻しん)と三日はしか(風しん)に対する抵抗力をつけるよい機会
となります。
目黒みらい内科クリニックでも風しん抗体検査、ワクチン接種が可能ですので、詳しくは下のブログをお読みください。
また上記風しん抗体検査、風しん第5期定期接種の対象となっている男性以外でも、お住いの自治体が風しん抗体検査、予防接種の費用を負担してくれる場合があります。
ちなみに目黒みらい内科クリニックのある東京都品川区での対象は
・19歳以上の品川区民の方
・これまでに品川区の助成制度を一度も使用したことのない方
・妊娠を希望する女性の方
・妊婦もしくは妊娠を希望する女性の夫等の同居者
などとなっています(品川区 風しん抗体検査・予防接種費用の助成について)。
お住いの自治体により対象の方や費用負担の内容、また細かい条件が異なりますのでそれぞれご確認下さいね。
【水ぼうそう(水痘)】
じつは水ぼうそう(水痘)のワクチンが定期接種になったのは
平成26年
と最近なのですね。
つまり平成25年までは任意接種だったので、水ぼうそう(水痘)のワクチンを打っていない方は多いと思います。
平成26年から定期接種となったことにより子供の水痘の流行は激減しているのですが、大人の流行が目立つようになってきていると言われています。
ただ令和2年2月現在、残念ながら三日はしか(風しん)に対する抗体検査やワクチン接種のように厚生労働省や自治体が主導している取り組みはないのです・・・。
3)徐々に抵抗力やワクチンの効果が弱まる
はしか(麻しん)、三日はしか(風しん)、水ぼうそう(水痘)、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)については、一度その病気にかかると抵抗力(免疫)がついて、その後はかかりにくくなると聞いたことがある方もいると思います。また直接かかっていなくても「ワクチンを打ったから大丈夫」と考えますよね。
ただ残念ながらその病気にかかったことで身体についた抵抗力、ワクチンの効果とも年を経るごとに徐々に落ちてきてしまうのです。
上記4つのワクチンを打った場合、どれくらい抵抗力がつくのか、またその抵抗力がどれくらい持続するのかについては個人差があるのですが、効果の持続期間はおおよそ
10年~20年程度
と考えていただくとよいと思います。
そうすると10代で定期予防接種は終了しますので、人によっては30歳~40歳で抵抗力が落ちてくる方がいるということです。
(ただし個人差があるため必ず落ちてくる、というわけではありません。ご注意ください)
ではどのように現在の抵抗力を確認すればよいのか?
それは
血液検査
でわかるのです。
ちなみにこの血液検査は目黒みらい内科クリニックでも行っていますし、他のクリニックや病院でも実施してくれるところがあります。
ただ健康保険がきかない自費検査となりますのでご注意ください。
目黒みらい内科クリニックでは下記の検査を行っております。
検査結果が分かるのに1週間程度かかりますのでご了承ください。
「一体自分にはどの程度抵抗力が残っているんだろう・・・」
と気になる方、知りたい方はお気軽に目黒みらい内科クリニックにご相談下さいね。
今回は長くなりましたのでこの辺で。
次回は
ワクチン接種
についてお話する予定です。
本日も最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました。
けい先生
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